『夜な夜な響く歯ぎしり音、実は全身の警告サイン?』
〜歯科医が明かす歯ぎしりと健康の深い関係〜

こんにちは。埼玉県桶川市の手代木歯科院長の手代木です。

当院には「朝、頭が重い」「原因不明の肩こりに悩まされている」という訴えで来院される患者さんが増えています。実は、これらの症状の原因として「歯ぎしり」が隠れていることが少なくありません。今回は、意外と知られていない歯ぎしりの影響について、詳しくお話ししていきます。

目次

歯ぎしりの基礎知識

歯のイラスト

歯ぎしり(ブラキシズム)は、無意識に歯を強くこすり合わせたり、食いしばったりする習癖のことを指します。特に睡眠中に起こることが多く、本人が気付いていないケースがほとんどです。日本人の約30%が何らかの歯ぎしりの症状があるとされ、特に20-40代に多く見られる傾向にあります。

ある調査では、ストレス社会と言われる現代において、歯ぎしりの発症率は年々増加傾向にあることがわかっています。特にコロナ禍以降、在宅ワークの増加や生活リズムの変化により、新たに歯ぎしりの症状が出始めた方も少なくありません。

歯ぎしりの主な原因としては、精神的なストレスや不規則な生活習慣が挙げられます。また、歯列の不整や睡眠時無呼吸症候群、さらには胃食道逆流症なども関連することが近年の研究でわかってきました。子どもの場合は成長とともに自然に改善されることが多いのですが、大人の場合は適切な対処が必要です。実際に当院を受診される方の中には、何年も気づかないうちに症状が進行していたというケースも珍しくありません。

歯ぎしりがもたらす口腔内への影響

女性の画像

歯ぎしりによって発生する力は、通常の咀嚼時の数倍にも達することがあります。具体的には、普段の食事時の咬む力が40〜50kg程度なのに対し、歯ぎしりでは100kgを超えることもあるのです。この想像を超える強い力が、睡眠中に繰り返しかかることで、様々な問題が引き起こされます。

まず最も顕著な影響が、エナメル質の摩耗です。エナメル質は体の中で最も硬い組織ですが、それでも長期的な歯ぎしりには耐えられず、徐々に摩耗していきます。その結果、知覚過敏や歯の変色、さらには歯の欠けなどが発生することになります。

さらに深刻なのは、過度な力が顎関節にかかることで起こる顎関節症や開口障害です。顎関節症になると、口を開けづらい、顎から音がする、顎が痛いなどの症状が現れ、日常生活に支障をきたすことになります。

また、歯周組織への影響も見過ごせません。強い力が継続的にかかることで、歯周病が進行したり、歯の動揺が起こったりすることがあります。特に歯周病がある方の場合、歯ぎしりによって症状が急速に悪化する可能性があるため、早めの対処が重要です。当院では、定期的なメンテナンスの際に、歯ぎしりのチェックも行っています。

意外と知らない!全身への影響

女性の画像

歯ぎしりの影響は、実は口の中だけにとどまりません。顎の筋肉の緊張は、まるで連鎖反応のように全身に波及していきます。多くの患者さんが訴える頭痛や肩こりは、実はこの筋肉の緊張が原因となっていることがあるのです。

特に注目すべきは睡眠への影響です。実は、歯ぎしりは睡眠の質を著しく低下させることがわかっています。通常、私たちの睡眠は浅い睡眠から徐々に深い睡眠へと移行し、この深い睡眠時に体の回復が行われます。しかし、歯ぎしりが頻繁に起こると、この深い睡眠が妨げられ、その結果として日中の眠気や集中力の低下を引き起こすのです。

さらに、深い眠りが得られないことでストレスが蓄積し、それがまた歯ぎしりを悪化させるという悪循環に陥ることも少なくありません。当院に来院される患者さんの中には、「よく眠れているはずなのに疲れが取れない」という訴えをされる方が多くいらっしゃいます。

また、意外かもしれませんが、消化器系への影響も報告されています。歯ぎしりによる筋肉の緊張は、消化管の動きにも影響を与え、消化不良や胃酸の逆流といった症状を引き起こすことがあります。実際に、夜間の胃酸の逆流は、歯ぎしりを持つ患者さんに多く見られる症状の一つです。

最近の研究では、自律神経系への影響も指摘されています。歯ぎしりによる持続的なストレスは、自律神経のバランスを乱し、血圧の上昇や心拍数の乱れなどを引き起こす可能性があることがわかってきました。

歯ぎしり対策と予防法

歯ぎしりへの対処は、まず生活習慣の改善から始めましょう。就寝前のリラックスタイムの確保や、規則正しい生活リズムの維持が基本となります。スマートフォンやパソコンの使用は、就寝の1時間前には控えめにすることをお勧めします。

また、日中の姿勢も重要です。デスクワークが多い方は、無意識のうちに顎に力が入っていることが多いため、定期的に顎の力を抜くことを意識してください。

当院では、患者さんの症状や生活習慣に合わせて、最適な治療法をご提案しています。例えば、就寝時に装着する専用のマウスピースは、歯ぎしりによる歯への負担を大きく軽減することができます。このマウスピースは、個々の患者さんの口腔内に合わせて作製されるため、違和感なく使用することができます。

また、必要に応じて噛み合わせの調整や歯列矯正なども検討します。特に、歯並びの悪さが歯ぎしりの原因となっているケースでは、歯列矯正により症状が大きく改善することもあります。

加えて、当院では定期的なメンテナンスの際に、歯ぎしりの進行状況もチェックしています。早期発見・早期治療が、より良い治療結果につながります。

まとめ

歯ぎしりは、決して軽視できない症状です。朝の頭痛や顎の違和感、原因不明の肩こり、日中の強い眠気など、一見歯とは関係ないと思われる症状の裏に、実は歯ぎしりが隠れていることがあります。これらの症状でお悩みの方は、ぜひ一度、歯科医院での検査をご検討ください。

手代木歯科では、歯ぎしりでお悩みの方に対して、詳しい検査と適切な治療法のご提案を行っております。桶川市周辺にお住まいの方はもちろん、遠方からも多くの患者さまにご来院いただいております。毎日を快適に過ごすため、お気軽にご相談ください。

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